大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成10年(特わ)1040号

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官永村俊朗、弁護人黒川厚雄各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社帝国興信所を罰金一八〇〇万円に、

被告人谷口卓爾を懲役一〇月に処する。

被告人谷口卓爾に対し、この裁判確定の日から三年間右の刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社帝国興信所(以下、「被告会社」という)は、東京都渋谷区渋谷三丁目一七番四号(平成八年四月一四日以前は、横浜市保土ヶ谷区星川一丁目二一番二三号)に本店を置き、興信所の経営を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人谷口卓爾(以下、「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として被告会社の業務全般を統括しているのものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、営業上の財産及び損益の状況を明らかにする帳簿を作成せず、かつ、売上金を仮名預金口座に入金するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  平成四年一〇月一日から平成五年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五〇万三二八三円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右法人税の納期限である同年一一月三〇日までに、横浜市保土ヶ谷区帷子町二丁目六四番地所轄保土ヶ谷税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三六九二万八六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成五年一〇月一日から平成六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六五一九万一四二円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右法人税の納期限である同年一一月三〇日までに、前記保土ヶ谷税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二三六八万六二〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成六年一〇月一日から平成七年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二五九三万一四一一円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右法人税の納期限である同年一一月三〇日までに、前記保土ヶ谷税務署長に対し、法人税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額八九六万四一〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

* 括弧内の甲乙の番号は検察官請求証拠番号

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官調書三通(乙一ないし三)

一  大蔵事務官作成の調査書二六通(甲一ないし一四、一六ないし二六及び二九)

一  検察事務官作成の捜査報告書二通(甲三二及び三三)

一  登記官作成の履歴事項全部証明書(乙六)及び閉鎖登記簿謄本(乙七)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の調査書(甲一五)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の調査書(甲二七)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の調査書(甲三〇)

一  検察事務官作成の捜査報告書二通(甲三一)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の調査書(甲二八)

(法令の適用)

一  該当法条

1  被告会社

いずれも法人税法一六四条一項、平成一〇年法律二四号による改正前の法人税法一五九条一項、情状により、法人税法一五九条二項

2  被告人

いずれも平成一〇年法律二四号による改正前の法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

被告人の各罪につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第一の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

五  訴訟費用

被告会社及び被告人 刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、三事業年度にわたって全く納税申告をせず、その間の法人税を一〇〇パーセントほ脱した事案であり、そのほ脱税額は、合計六九五七万円余の多額にのぼり、動機は、事業資金を蓄えるためあるいは喫茶店等の経営資金の確保などというものであって、酌量の余地はなく、その方法手段も、あらかじめ所得隠しのための仮名・借名預金口座を設けたり、被告人やその家族名義で不動産を取得するなど、巧妙、計画的であり、継続性も認められる。

これらの事情に照らすと、犯情悪質といわざるを得ず、被告人及び被告会社の刑事責任は軽くない。

しかし、被告会社は、その後修正申告の上本件に関する本税、重加算税、延滞税を完納していること、顧問税理士に依頼し経理体制の改善を行っていること、被告人は、現在では反省の態度を示し、当公判廷において、今後再び罪を犯さない旨誓っていること、被告人に前科前歴がないことなど被告人及び被告会社のために酌むべき事情も認められる。

以上の諸事情を総合考慮し、主文のとおり量刑した。

(求刑 被告会社・罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 池田耕平)

別紙1

修正損益計算書

自 平成4年10月1日

至 平成5年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

別紙2

修正損益計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

別紙3

修正損益計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

別紙4

ほ脱税額計算書

自 平成4年10月1日

至 平成5年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

ほ脱税額計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

ほ脱税額計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

株式会社帝国興信所

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!